宇宙の大きさ(3)

現在の我々が観測することができる最も古い時代に放たれた光は、約138億年前に約4100万光年離れた空間から放たれた光である。そしてその光源がある空間は、現在450億光年の彼方にあり、光は138億年かけて138億光年の道のりを旅してきた。わずか4100万光年の距離を光が進むのに138億年もの時間を費やしたのは宇宙の膨張が地球への接近を阻んだためである(これは、流れの速い川を上流へ向かう船がなかなか前に進めないことと似ている。宇宙空間の膨張は一般相対性理論より導かれる。よって電磁波の媒質である空間の膨張により地球を基点としたときの、地球から離れた場所にある光の速度が変化しても特殊相対性理論における「光速度不変の法則」とは矛盾しない)。

我々の観測可能な領域を超える宇宙は、共動距離的な意味の場合、インフレーション理論に基づき、より広大であろうと予想されている。宇宙の大きさは、誕生から現在までの膨張速度にもよるが、レオナルド・サスキンドはインフレーション直後の宇宙の大きさは有限ながらも、という非常に大きな値を解の1つに得ている。宇宙の大きさが有限の場合、空間は閉じており、直進すれば宇宙を1周することになる。無限であるとすれば永久に元の場所に戻ることはないが、確率的には十分遠方に至れば地球周辺と原子配置が同一の領域が存在すると言える。この領域に到達した時点で実質的に宇宙を周回したことと同じ効果があり、無限宇宙は矛盾する。

宇宙の大きさ(2)

地球上から見ることができる宇宙の大きさとは、人間が物理的に観測可能な宇宙の時空の最大範囲を指す表現である。宇宙は膨張し続けているため、宇宙の大きさを表現するにはいくつかの単位がある。光を含む電磁波により人類が地球から観測可能な宇宙の果てと言うと、観測できる光のなかでも、最も古い時代に光が放たれた空間のことを指している。この空間から光が放たれたとき、つまり約138億年前、この空間(観測可能な宇宙の果て)は地球がある位置から(地球を中心とする全方向に宇宙論的固有距離において)約4100万光年離れたところにあった。そしてこの空間は、地球の位置から、光の約60倍の速度で遠ざかっていた、とされる。この空間までの現在の距離である共動距離は、約450億光年と推定されている。

宙の晴れ上がりの直後から約138億年の間に、宇宙は約1090倍程度に膨張したと考えられている。この空間は現在、光速の約3.5倍の速度で地球から遠ざかっている(宇宙の膨張は空間自体の膨張であるため、光速を超えることも可能である)。「天体から放たれたが地球にたどり着くまでの時間に光速をかけたもの」は光行距離と呼ばれている。これは光が地球に届くまでの間に、光の旅した道のりを表す。光行距離では、電磁波により観測される宇宙の果てから地球までの光の旅した道のりは約138億光年と推定されている。これは光速に宇宙の年齢をかけたものだが、この値は先に述べた2つの距離(450億光年、4100万光年)と値が異なっている。光が地球に届く間に宇宙が膨張し、そのため光の道のりが延び、また光を放った空間が遠ざかるからである。つまり、光行距離はある時刻における空間上の2点間の距離を指し示すものではない。天文学では光行距離を天体までの距離とみなすことが多いが、それは我々に届く光が旅した道のりであり、現在の天体までの距離や、天体が光を放ったときの天体までの距離を示すものではない。

宇宙の大きさ(1)

宇宙の大きさについてはまだ分かっていないことが多いが、「宇宙の果て」と言えば2種類の意味がある。ひとつは、数百年前でも議論されていたことで、物理的な空間に端があるのか、相対性理論が提唱されて以降は空間は曲がってつながっていて端は無いのか、という問題として扱う場合。「宇宙の果て」は、もうひとつの意味としては、観測可能な限界ライン(宇宙の地平線)を指す。

地球から理論上観測可能な領域(観測可能な宇宙)に限って問題にすれば、半径約450億光年の球状の範囲である。ただしこの大きさは赤方偏移から計算された理論上の値であり、直接の観測によって正確に分かっているわけではない。

典型的な銀河の直径でも3万光年であり、隣どうしの銀河の間の典型的な距離は300万光年にすぎない。例えば、我々人類が属している天の川銀河はざっと10万光年の直径であり、我々の銀河に最も近い銀河のアンドロメダ銀河はおよそ250万光年離れている。観測可能な宇宙の範囲内だけでもおそらく1000億個(1011個)の銀河が存在している 

宇宙論

 
ペトルス・アピアヌス(en:Petrus Apianus) による Cosmographia 。アリストテレスの説に沿ったコスモス像。天球の多層構造(アントワープ、1539年)
 
アルマゲスト』(George of Trebizond によるラテン語版、1451年頃)

宇宙がいかに始まったかについての議論は宗教哲学上の問題として語られて続けている。宇宙に関する説・研究などは宇宙論と呼ばれている。 古代インドのヴェーダでは無からの発生、原初の原人の犠牲による創造、苦行の熱からの創造、といった宇宙生成論があった。古代ギリシャではヘシオドスの『神統記』に宇宙の根源のカオスがあったとする記述があったが、ピタゴラス学派は宇宙をコスモスと見なし、天文現象の背後にひそむ的な秩序を説明することを追究した。秩序の説明の追究は、やがてエウドクソスによる、地球を27の層からなる天球が囲んでいる、とする説へとつながり、それはまたアリストテレスへの説へと継承された。2世紀ころのクラウディオス・プトレマイオスは『アルマゲスト』において、天球上における天体の動き(軌道)の数学的な分析を解説した。これによって天動説は大成され、ヨーロッパ中世においてもアリストテレスの説に基づいて宇宙は説明された。しかし天球を用いた天体の説明は、その精緻化とともに、そこにおける天球の数が増えていき、非常に複雑なものとなっていった。こうした状況に対し、ニコラウス・コペルニクスは従来の地球を中心とする説(地球中心説)に対して、太陽中心説を唱えた。この太陽中心説地動説)は、当初は惑星軌道が楕円を描いていることが知られていなかったために周転円を用いた天動説よりも精度が低いものであったが、やがてヨハネス・ケプラーによる楕円軌道の発見などにより地動説の精度が増していき、天動説に代わって中心的な学説となった。

 

宇宙

  1. コスモス。に秩序をもって存在する「こと」や「もの」の総体。何らかの観点から見て、秩序をもつ完結した世界体系。
  2. 全ての時間と空間、およびそこに含まれるエネルギーと物質[1]。あらゆる物質放射を包容する空間。あらゆる物事を含む全ての存在。
  3. ビッグバン理論等で統一的に説明されうる、現実的、現在的に我々が暮らすひとつの広大な世界。ユニバース。もしくはその外側に仮想されるユニバースの複合体全体。(「ユニバース」という語には「ひとつ」という意味が込められているが、最近では、宇宙について論じる時、3次元的につながった空間だけではなく、平行宇宙も含めて論じられることがある。複合的宇宙もしくは多元的宇宙という意味で「マルチバース」と呼ばれる。単一宇宙と区別して複合宇宙全体を指す場合には特に「オムニバース」ともいう。)
  4. れることがある。複合的宇宙もしくは多元的宇宙という意味で「マルチバース」と呼ばれる。単一宇宙と区別して複合宇宙全体を指す場合には特に「オムニバース」ともいう。)
  5. 3次元空間的に繋がった広大な宇宙全体を指すこともある。「宇宙」で観測不可能な領域を除いた「観測可能な宇宙」を指すこともある
  6. 宇宙空間。地球の地上約100km以上、上空の空間を指す便宜的な定義